呼吸筋メタボリフレックスとは?〜呼吸と疲労の意外な関係〜

呼吸筋メタボリフレックスという言葉をご存知でしょうか?


「ちょっと動いただけで脚が重い」


「階段を上ったら全身がぐったり」


もしかするとこうした経験が、呼吸器の病気がある方や、運動を頑張る人にとっては日常かもしれません。


でもそれ、実は「呼吸筋メタボリフレックス」という体の仕組みが関係しているかもしれません。

銀次郎
銀次郎

この記事では「呼吸筋メタボリフレックス」のメカニズムについて解説します

1. 呼吸筋メタボリフレックスとは

まずはじめに、呼吸筋メタボリフレックスとは、呼吸筋が疲労したときに、交感神経が活性化し、手足などの筋肉への血流が制限されてしまう現象のことです。


この交感神経とは自律神経のうちの一つで、体の機能を活性化させる作用があります。



呼吸筋疲労が結果てにに手足の血流低下につながる仕組みを以下にまとめました。

  1. 呼吸がしづらい状況では、呼吸筋(横隔膜や肋間筋など)が酸素不足に陥る
  2. 呼吸筋に乳酸などの代謝産物がたまる
  3. それが“酸素が足りない!”という信号として、神経を通じて脳へ伝わる
  4. 脳がそれに反応して、“酸素の供給を抑えなきゃ!”と交感神経を活性化
  5. 交感神経の働きで、手足などの筋肉への血流を絞ってしまう

結果的に、脚や腕の筋肉が酸素不足に陥り、脚がだるくなったり、疲労感が増したりします。
これが「呼吸筋メタボリフレックス」です。


要するに、人間の体はより重要な臓器に血流(酸素)を多く送れるように調整してくれている、ということなんですね。

2. 呼吸筋メタボリフレックスはどんな人に起こりやすい?

ではどのような方にこの反射が起こりやすいのでしょうか?

実は呼吸筋メタボリフレックスは、誰にでも起こり得る仕組みなのです。

特に以下のような方で起こりやすいとされています。

  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性呼吸器疾患の患者さん
     → 呼吸筋が常に疲労しやすい
  • 高強度の運動を行うアスリート
     → 長時間の激しい運動で呼吸筋が疲れ、パフォーマンス低下の原因に
  • 高齢者や呼吸筋が弱っている方
     → 小さな負荷でも呼吸筋がすぐ疲れてしまう
銀次郎
銀次郎

リフレックスは一時的な現象ですが、すぐに疲弊してしまう状態が持続すると、慢性的な運動耐容能の低下にもつながってしまいます

3. 呼吸筋メタボリフレックスはどうしたら予防できるの?

ではどうしたら呼吸筋メタボリフレックスを予防することができるのでしょうか?

これは単純に上述したメカニズムの「呼吸がしづらい状況では、呼吸筋(横隔膜や肋間筋など)が酸素不足に陥る」という起点を起こさせなければいいわけです。

つまり、呼吸筋の負担を軽くすることで、この反射を抑えやすくなります。

以下に予防方法をまとめました。

  • 呼吸筋トレーニング(IMT:Inspiratory Muscle Training)
    → IMT(呼吸筋トレーニング)は、呼吸筋の持久力と筋力を高める方法です。5〜10分の練習を毎日続けることで、呼吸筋の疲労に強くなり、RMMRの発動を抑える効果が報告されています。
    アスリートだけでなく、慢性呼吸器疾患の方でも有効であると言われています。
  •  軽めの有酸素運動
    → 運動の負荷を上げすぎない。ウォーキングや自転車など、自分に合った負荷で運動を行い、全身の血流を保つことも大切。
  • 呼吸のラクになる姿勢や呼吸法を身につける
    → 腹式呼吸、口すぼめ呼吸など、効果的な呼吸法の習得もおすすめです。特に慢性呼吸器疾患の方のリハビリとして有用です。

4. まとめ:呼吸がラクになると、体もラクになる

呼吸筋は全身の疲労やパフォーマンスに大きく関わる大切な存在です。


呼吸がつらいとき、足が動かないのは「根性の問題」ではなく、身体が発している正当なサインかもしれません。


自分の体の仕組みを知ることで、より的確な対策がとれ、生活の質やリハビリの効果も高まります。
呼吸のつらさに悩み、そのせいで運動が思うように続かない方にこそ、ぜひ知っておいてほしい知識です。

参考文献

  1. Sheel AW, Dominelli PB, Molgat-Seon Y. Respiratory muscle metaboreflex: Connecting the ‘dots’. Exp Physiol. 2018;103(11):1441-1442. doi:10.1113/EP087436
  2. Amann M, Calbet JA. The role of muscle mechano and metaboreflexes in the control of ventilation: breathless with (over) excitement? J Physiol. 2008;586(17):4575-4576. doi:10.1113/jphysiol.2008.159558
  3. Turnes T, Azevedo L, Torres R, et al. Blood pressure and coeliac artery blood flow responses during increased inspiratory muscle work in healthy males. Eur J Appl Physiol. 2016;116(3):541–550. doi:10.1007/s00421-015-3311-z

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