辛いものを食べたときに「ゴホッ」と咳き込んだ経験、ありませんか?
風邪をひいているわけでもないのに、唐辛子系の料理で急に咳が出る…。実はこれ、医学的にしっかり説明できる現象なんです。
今回は、身近に起こる“辛いものを食べたら咳が出る現象”の原因と対策をお伝えします。

この記事では暮らしに関わる身近な疑問に関してご説明しています
1. なぜ咳が?|辛さの正体「カプサイシン」が咳の引き金に
唐辛子などの辛いものの主成分は「カプサイシン」と呼ばれる天然の有機化合物です。
このカプサイシンは、私たちの痛覚神経を刺激します。実は辛さは“味覚”ではなく“痛覚”で感じているんですね。
カプサイシンが 気道のTPRV1受容体という咳センサーを刺激することで、咳反射が起きることがあります。とくに、このセンサーは熱にも反応するため、熱い料理と組み合わさると刺激が強くなり、むせやすくなります。
2. 辛いもので咳が出やすくなる体質や病気がある
実は、カプサイシンは医療現場で検査薬として使われます。どのように使用されるかというと、咳を誘発させるために吸入させます。
これは咳がたくさん出てしまう人に対して、気道が過敏になっているか、ということを調べるために行います。これを咳感受性試験と言います。
なぜこのような事をして調べるかというと、炎症や感染があるとTPRV1の感度が上昇し、より咳が出やすくなるとされているためです。
風邪を引いた時に辛いもので咳が出やすくなるのも、こういったメカニズムのせいです。
また気管支喘息、咳喘息、COPD、慢性気管支炎など呼吸器疾患がある方も、上記の理由で咳が出やすいと考えられています。
3. 咳を防ぐにはどうしたらいい?
結論から言ってしまうと、辛いものを食べないことで避けられます。ですが、これでは辛いものを食べたい人にとっては解決策になっていません。
以下にできる簡単な解決策を提示します。
結局避けるんじゃないか!と思われる方もいるかもしれませんが、申し訳ございません。一時的にです。
風邪を引いている時だけ、咳がが辛い時だけ。症状が辛い時は食べることを我慢しましょう。
上述したように、熱は咳のセンサーを過敏にさせます。
冷ますことで感度を少し下げられるため、有効であると考えられます。
また、少量ずつ摂取する方法もあります。
一度に取るカプサイシンの量も減らすことでカプサイシンの濃度が下がるため、こちらも有効です。
辛いものは他にもございます。
具体的にはコショウ、ワサビ、山椒、マスタードなどがあげられます。
それは違うなぁ・・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、代替というのは一つの選択肢になりますね。
4. 辛いものを食べてもなんともない人って、どうなっているの?
テレビで辛いものを食べても平気なんて方が激辛料理をペロリと食べ切るシーンがありますね。見ているこちらが痛くなってきます。
実はカプサイシンを定期的に摂取することで、咳センサーの反応が鈍ることがあります。これを脱感作といいます。
これは、慢性的に咳が出ている方に毎日カプサイシンカプセルを投薬したところ症状が改善したという研究結果に基づきます。
もしかすると脱感作が関わっているのかもしれませんね。
あくまで研究は医師監修のもとに安全に行われているので、ご自身でトライするのは避けましょう。
何事にも限度が大事と言うことですね。
5. まとめ
辛いものによる咳は、多くの人にとって自然な反応です。
ですが、実は体質や隠れた病気が関係していることもあります。
咳がつらい、長引くという方は、日常の食事や体調を見直すきっかけにしてみてください。
- Smith JA et al. Cough reduction using capsaicin: a randomized placebo-controlled trial in patients with chronic refractory cough. Eur Respir J. 2020;56(5):2000622.
- Kistemaker LEM et al. Heterogeneity of cough hypersensitivity mediated by TRPV1 and TRPA1 in patients with chronic refractory cough. Respir Res. 2022;23:85.