医療DXとは?―医療DX推進体制整備加算についても解説

医療DXという言葉をご存知でしょうか?

これは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、DXと表記されています。

医療経営士3級の勉強を進めていく中で、たびたび出会いました。

例えば前回の記事にあるオンライン資格確認は医療DXの一貫の一つです。

オンライン資格確認とは?—医療経営士3級試験勉強シリーズ②—

「デジタル化でしょ?」と中身もよく分からないまま軽く捉えていました。

しかし掘り下げていくとこれは日本の医療の根本的なあり方を変える、大きな波だと感じました。

今回は、私がこのテーマから得た気づきをご紹介しつつ、「なぜ医療経営士に医療DXの視点が不可欠なのか」も考えてみたいと思います。

銀次郎
銀次郎

私がもう少し勉強しておけばよかったと感じた出題範囲を解説しています

結論だけを知りたい方向け!

この記事では以下の項目に関してそれぞれ説明しています。

まとめ〉|これだけは覚えておいた方がいい!

・医療DXとは、保健・医療・介護に関わるデータを共通基盤で連携・活用し、現場の効率化、質の高い医療、そして国民の健康寿命延伸を実現する仕組み


・単なるツールの導入ではなく、医療の提供体制全体をデジタルの力で再設計する改革


・令和6年度の診療報酬改定により、「医療DX推進体制整備加算」が制定

・加算には要件があり、「オンライン資格確認」「電子カルテ情報の共有」「マイナ保険証の普及」「電子処方箋の発行」が必要(令和7年度5月時点)

・医療機関ごとのマイナ保険証の普及率と電子処方箋発行の可否で算定額が異なる(令和7年度5月時点)

それでは各項目について説明していきます。

1. 医療DX とは?― オンライン資格確認は「入口」にすぎない

「医療DX」と聞くと、オンライン資格確認やマイナ保険証、電子カルテの導入といった“IT化”や“デジタル化”のことだと考える方も多いかもしれません。

実際、私自身もそう捉えていました。

しかし厚生労働省の説明を改めて読むと、医療DXの本質はもっと深く、広範な意味を持つことがわかります。

その定義を要約すると、次のようになります。

「医療DXとは、保健・医療・介護に関わるデータを共通基盤で連携・活用し、現場の効率化、質の高い医療、そして国民の健康寿命延伸を実現する仕組み」

つまり医療DXとは、単なるツールの導入にとどまらず、医療の提供体制全体をデジタルの力で再設計する改革なのです。

医療DXの具体的な内要

では具体的な内容に関して記載致します。

以下の九つの項目が計画されております。

オンライン資格確認

マイナンバーカードを健康保険証として利用し、保険資格や薬剤・特定健診等の情報をリアルタイムで確認。より適切な医療提供の基盤となります。

オンライン資格確認とは?—医療経営士3級試験勉強シリーズ②—

電子カルテ情報共有サービス

全国の医療機関や薬局で、診療情報や健診結果、アレルギー情報などを共有できる仕組み。患者・医療従事者双方が情報を確認でき、継続的で安全な医療を支援します。

標準型電子カルテシステム

全国共通の仕様に基づき、異なる医療機関間でも情報共有がしやすい電子カルテ。民間サービスとの連携も可能な柔軟性の高い仕組みです。

電子処方箋

処方・調剤情報を電子的に共有し、重複投薬や薬剤相互作用のチェックが可能に。医薬品の安全な管理と効率的な処方が期待されます。

医療費助成のオンライン資格確認

マイナンバーカードを医療費助成(公費医療)の受給者証として活用し、資格確認をデジタルで行う取り組み。事務負担軽減と正確性の向上が目的です。

予防接種事務のデジタル化

接種対象者の確認、予診票の電子化、自治体への費用請求のオンライン化など、予防接種に関わる事務を効率化する仕組みです。

介護情報基盤の構築

介護サービス利用者の情報を関係者間で共有し、本人の同意のもと、介護と医療の連携強化・サービスの質向上を目指す取り組みです。

医療等情報の二次利用

匿名化した医療・介護データを研究・政策立案等に活用する仕組み。制度整備と技術基盤の構築が進められています。

診療報酬改定DX

診療報酬計算の共通プログラム(共通算定モジュール)の開発や、公費医療の自己負担額の自動計算などにより、医療機関の事務負担とシステム改修コストの軽減を図ります。

2. 「医療DX推進体制整備加算」って?

令和6年度の診療報酬改定により、新たに「医療DX推進体制整備加算」が設けられました。

これは、医療機関が医療DXの推進に向けた体制を整えていることを評価する加算です。

対象は外来診療料で、月1回、一定の要件を満たすことで加算されます。

ポイントは以下の4つ:

  1. オンライン資格確認の導入
  2. 電子カルテ情報の共有への対応(全国医療情報プラットフォーム対応)
  3. マイナ保険証の利用促進・体制整備
  4. 電子処方箋の発行

この中でも特に導入のハードルが高いのが「電子処方箋」です。

そのため、加算の仕組みは柔軟に設計されており、電子処方箋の導入状況や、マイナ保険証の利用率に応じて加算点数が変動するようになっています。

ただし、これは令和7年5月時点の制度です。

今後さらに医療DXの普及が進むにつれて、要件や加算内容も見直されていく可能性があります。

3. 医療DXのメリットは?

では、医療DXが進むことで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

私見も含まれますが、主に次の2点が挙げられると考えています。

  • 医療機関間の連携強化
  • 医療業務の効率化

まず、医療機関間の連携強化について。

患者さんの中には、複数の診療科や医療機関を受診している方が多くいらっしゃいます。また、救急外来など普段と異なる医療機関を受診する場面も珍しくありません。

そのような時、これまでの診療歴や服薬情報が医療機関間で共有されていれば、より的確かつ安全な診療が可能になります。たとえば、「何に対してどの薬をどのくらい飲んでいるのか」がすぐに把握できれば、重複投与や副作用のリスクも回避しやすくなります。

高齢者だけでなく、若い方でも薬が増えてくると自身で把握しきれなくなるケースは意外と多いのです。

そんな時に医療情報の共有は、患者さんの安全と医療の質の両面で大きな支えになります

次に、医療現場の業務効率化について。

近年、医療業界では慢性的な人手不足が課題となっています。

DXによる業務の自動化や情報管理の効率化が進めば、医療者の負担軽減にもつながります。特に受付・会計・レセプト処理など、定型業務の省力化は大きな効果が期待されます。

もちろん、すべてが一朝一夕に実現するわけではなく、DXの本格的な普及にはまだ時間がかかるかもしれません。

それでも、確実に医療機関は「より利用しやすく」「より安全に」なる方向へ進んでいます。医療DXは、患者さんにとっても、医療者にとっても、未来への大きな一歩なのです

4. まとめ

医療DXは、決して一過性のブームではありません。

これからの医療経営には、デジタル技術を活用して医療のあり方そのものを見直す視点が求められています。

そして、各医療機関にはその変化に対応するための主体的な変革が必要です。

数年後には、電子処方箋や医療情報の共有が当たり前になっているかもしれません。

医療DXは、未来の医療を支える大きな一歩なのです。

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