「あなたの呼吸機能は基準値を下回っています。再検査を受けてください」
「あなたの肺年齢は実年齢より高いです」
健康診断結果のコメントにこのようなが記載があり、不安になった方も多いのではないでしょうか?
最近、健康診断や人間ドックで呼吸機能検査(スパイロメトリー)を導入する自治体や企業が増えてきました。
今回は、呼吸機能検査で何を調べているのか、基準値の意味や数値の見方、注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。
1. 呼吸機能検査って何を測っているの?
呼吸機能検査(スパイロメトリー)では、肺の働き、つまり「空気を出し入れする能力」を調べます。
主に以下の4つを測定します:
- 肺活量(VC):息を最大まで吸って、最大まで吐き出した時の空気の量
- 努力肺活量(FVC):思いきり息を吸ったあと、一気に吐き出した時の空気の量
- 1秒量(FEV1):一気に吐き出した時、最初の1秒で吐き出せた空気の量
- 1秒率(FEV1/FVC):一気に履いた時に、1秒間で吐けた量の全体に対する割合。吐き出すスピードの評価

「思い切り吐いて!」っていうのが結構大変で、うまくいかないことも多いんですよ
2. 呼吸機能検査の基準値と見方
空気の量は単位がリットル(L)で計測されます。
そして、測定された結果が基準値と比較して何割くらいか? で評価します。
基準値は年齢・性別・身長などによって自動計算されるため、数値は個人で異なります。
では、一般的な正常値を以下に示します。
項目 | 正常値の目安 |
---|---|
肺活量(VC) | 基準値の80%以上 |
1秒量(FEV1) | 基準値の80%以上 |
1秒率(FEV1/FVC) | 70%以上 |
3. 呼吸機能検査の異常値と解釈
では、結果で異常が指摘された場合、何が問題なのでしょうか?
上述した項目毎に異常値のパターンを説明していきます。
これは、空気が入る量が少ないということです。つまりうまく息を吸えていません。
このパターンを拘束性換気障害といいます。
肺が膨らみにくくなる疾患が隠れている可能性があります。(例:間質性肺炎、塵肺、肥満による肺圧迫)
これは、息を吐き出すスピードが遅いということです。つまりうまく息を吐き出せていません。
このパターンを閉塞性換気障害といいます。
空気の通り道である気道が狭くなる疾患が隠れている可能性があります。(例:喘息、COPD)
FVCに対する比率なので、1秒量が低下していることによって1秒率が低下している事が多いです。
吸えないし、吐けないという状態になっています。
上記二つを併せ持つこのパターンを混合性換気障害といいます。
重喫煙によってCOPDが進行した場合など、肺内の病変が悪化した状態にある可能性が考えられます。
1秒率は正常なのに、1秒量が少ない。
1秒間で空気を吐き出すスピードは問題ありませんが、吐く量が少ないパターンです。
このパターンは換気障害とは言いませんが、実は結構指摘されている方がおられます。
考えられる原因は、喘息の初期またはCOPDの前段階じゃないかと考えられているPRISm(Preserved Ratio Impaired Spirometry)のなど可能性があります。
4. 呼吸検査で異常が出たらどうすればいい?
では、結果で異常にあったらどうすればいいでしょうか?

まずは焦らず落ち着きましょう
実は、呼吸機能検査は結構難しい検査です。
検査をする人の技術や検査を受ける人の頑張り(どれだけ思いきり息を吐こうとしたか)などで、結果が左右されます。
ですので、本当に異常なのかは呼吸機能検査の再検査や、聴診、追加の画像検査などを行わないと判断が難しいです。
確認するために、まずは呼吸器内科を受診しましょう。
無症状でも、何か疾患が隠れている可能性は否定できません。特に喫煙者の場合は、早期発見、早期治療につながる可能性があります。
決して自己判断はせず、専門家の意見を伺ってください。
5. まとめ
- 呼吸機能検査は「肺の空気を出す力・スピード」を見る大切な検査です
- 数値だけで判断せず、全身状態・症状・画像所見と組み合わせて評価することが重要です
- 異常を指摘された場合は、早めに専門医へご相談を!