「レジデント」という言葉をご存知でしょうか。
医療ドラマでよく使われたり、タイトルになっていたりするので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。
私も研修医時代には、『レジデントのための〜』といったタイトルの教本をよく読み込んでいました。

「ヤバレジ」「デキレジ」なんて造語も仲間内で飛び交ってましたね
本記事ではそんな「レジデント」という言葉を切り口に、現在の新専門医制度や医師のキャリアステップとの関係をわかりやすく解説していきます。
1. レジデントとは?
「レジデント(Resident)」は、もともと英語で「居住者」を意味する言葉で、「reside(居住する)」という動詞に由来しています。
医療の文脈では、病院に常駐し、専門的な研修を受けている若手医師のことを指します。
“病院に住み込むように働く”ことから、このように呼ばれるようになりました。
この呼称はもともとアメリカの医学教育制度に由来しており、日本でも1970年代頃から、若手研修医の呼び名として広く使われるようになりました。
2. どの学年までがレジデント?
では、日本では医師の何年目までを「レジデント」と呼ぶのでしょうか?
初期研修医? 後期研修医? それとも、新専門医制度における専攻医?
実は、この呼称には明確な全国共通の定義はありません。
2017年までの旧制度では、レジデントという言葉の使い方は病院ごとにばらつきがありました。
特に市中病院では、独自の「レジデント制度」を設けているケースも多く見られました。
一例としては、以下のような区分です:
- 医師1〜2年目:初期研修医=ジュニアレジデント
- 医師3年目〜5〜8年目:後期研修医=シニアレジデント
- それ以降(役職がつくまで):チーフレジデント
ただし、期間や呼称は病院によって異なり、「チーフレジデント」自体が存在しない施設も珍しくありません。

知人で初期研修医期間が3年の医師もいました
つまり、レジデントという言葉は“医師何年目”という年次での厳密な定義を持っていません。
2018年から始まった新専門医制度では、多くの若手が専門医プログラムに所属し「専攻医」と呼ばれるようになりました。

この制度では、「後期研修医」という言葉が公式には使われなくなり、代わりに以下のように整理されました:
- 医師1〜2年目:研修医(初期臨床研修)
- 医師3年目〜専門医取得まで:専攻医
このため、現在ではレジデント=専攻医と認識する方が実態に近いかもしれません。
特に、初期研修医の労働環境が見直され、勤務時間や業務内容に制限がかかってきた今、「病院に住み込むように働く医師」というレジデントの語感とは少し離れた存在になってきています。
3. まとめ
こここまで見てきたように、「レジデント」という呼び方には、
- 専門医制度の変化といった制度的な背景
- 病院ごとの医療現場の慣習
- 医師自身のキャリアステージ
といった複数の要素が重なり合っています。
現在では「レジデント」という言葉は、制度上の定義からは少し離れ、感覚的・慣習的な呼称として使われる場面が多くなりました。
その一方で、「専攻医」や「専門医」といった明確な制度名を使うことで、医師のキャリアや立場をより正確に伝えることができます。
医療の現場も制度も変化を続けています。
だからこそ、言葉の使い方もアップデートしていく必要があるのかもしれませんね。